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有島武郎と貸本屋(札幌古書組合 広報記事3)
 国鉄(札幌鉄道局)在職中から文学作品によく筆を揮っていたことでも知られる「えぞ文庫」の古川實氏。私(吉成)が伊藤書房で修行をしていた頃、伊藤勝美社長はよく古川氏のことを敬愛をこめてお話されていました。伊藤書房の目録「クラーク通信」ははじめ、えぞ文庫発行の「えぞもくろく」に範をとっていたそうです。レイアウトも瓜二つだったそうです。
 その古川氏が生前書き残したものを図書館学の藤島隆氏の編集でまとめた本が『古本えぞの細道』(北の文庫発行、平16)です。これによると古川氏が21才まで暮した家は有島武郎の旧居の極近所だったそうです。
 有島武郎と貸本屋との由来が『北のアンティクアリアン』に詳しく紹介されています。藤島隆氏によって、貸本屋「独立社」→「創建社」→「再現社」(「無産人」)→「白羊社」の系譜が綴られています。有島の親友から貸本屋が生まれ、社会運動の拠点ともなり、一冊の雑誌を発行しながら20数年間引き継がれた、とてもユニークな遍歴です。
 足助素一(あすけそいち、1878-1930)の「独立社」からはじまります。明治41年、15〜6冊ばかりの本を古い柳行李に入れて札幌で貸本屋「独立社」を開業しました(これは小樽ではじまった説もあるようです)。何度か移転し明治45年3月、南大通西4丁目(新川通・・・まだ川が流れていた頃ですね。)に落ち着きました。足助は札幌農学校時代の先輩有島武郎の社会主義研究会に出席していました。「独立社」の看板は有島が油絵具で大書したものが掲げられていたようです。その足助は大正3年正月、かつて教員を勤めていた新渡戸稲造創設の遠友夜学校に独立社の一切を譲り上京。東京で出版社「叢文閣」を興し、有島武郎全集(全12巻・大正13)や、高群逸枝や大杉榮など左翼系の本を出版しました。
 さて、遠友夜学校に引き継がれたはずの「独立社」ですが、どういう経緯からか、(遠友夜学校の鈴木や興膳辰五郎を経て)田所篤三郎が「創建社」(大通西5丁目1(新川端))として引き継ぎます。田所篤三郎は有島の小説「酒狂」のモデルの人物です。また創建社に出入りの十文字仁は小説「骨」の主人公として登場します。創建社では毎夜、詰襟服の学生や労働者などが集まっては酒を飲んで議論をかわし、革命歌を高唱していました。社会主義を標榜する不良青年たちのたむろする場所になっていたのです。東京方面の社会主義者とも気脈を通じている疑いもあり、大正11年9月22日、札幌署高等係は貸本屋に踏み込み、文書を押収、出版法違反で田所篤三郎以下数人を引致しました。田所は大正5年から国鉄苗穂機関区に勤務していた人物だそうです。留置場にいる間に田所は札幌で営業を停止されてしまいました。貸本屋は閉鎖となったのです。
 これを継いだのは棚田義明という人でした。呉服屋に生まれた彼は病弱で、療養中に客として創建社に足を運んでいました。大正11年末には田所から創建社を買い取り、名前を「再現社」と改めて貸本屋を始めました。店の棚には本がぎっしりと詰まっていて、白樺派の人々の本が多く、図書の扉には有島への献辞のあるものもあったそうです(・・・とすると、足助の独立社の頃から有島の蔵書はここに?)。棚田は本の好きな人物でしたが商売の才はなく借金をつくり、大正14年、奥出三郎に店を譲ることとなりました。棚田は一冊の雑誌を創刊しました。「無産人」です。創刊の言葉はあちこちが伏字だそうです。発行日は大正14年5月11日。この「無産人」は創刊号で廃刊となってしまいました。再現社を譲られた奥出は「白羊社」として昭和2年末まで営業を続けました。独立社から始まって足掛け20年あまりの遍歴です。
ところで「無産人」創刊メンバーに日本画家・民俗学者・社会運動家の橋浦泰雄の名があります。橋浦は兄が札幌に住んでいて、有島とも親交がありました。木田金次郎美術館で11月まで「橋浦泰雄−旅への導き」展が催されているようなので、ちかく岩内まで行ってみようと思っています。なにかまたサイドストーリーがあるかも知れません。

この貸本屋の遍歴を見て、貸本と古本と文学と出版と政治思想とが繋がっていた時代があったのだなぁと、たいへん勉強になりました。有島の残した足跡は大きいようです。


追記

のちに下記の本が出版された。(2010/7/18記)


| 札幌古書組合 広報記事 | 18:55 | comments(1) | trackbacks(0) |
コメント
いつも日本の古本屋でお世話になっております。伊藤書房さんとも知り合いなのですね。合わせて枕を向けて眠れません。足助素一は白い装幀の伝記があったはず。印刷の字が細かく完読出来てませんが、有島武郎は自殺する前に伊藤野枝の面倒を頼んで亡くなった話を覚えています。足助と有島は友情で結ばれていた推測されています。思い出したので、蛇足だったら申し訳ありません。紹介の本は読んでみます。 今度春5月発売の釧路春秋に平民新聞読者会について少し書きました。良ければお読み下さいませ。これからも日本の古本屋共々よろしくお願いいたします。
| 高瀬優直 | 2019/04/07 5:41 PM |
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