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はじめてのピザ、はじめての現代建築ホテル
生まれてはじめて食べたピザの味は、覚えていない。
でも、それがいつどこでだったかは、はっきり覚えてる。
中学二年生、まだやんちゃで、すっころんでは膝っ子僧にかさぶたをつくってた頃。
冬の僕の誕生日に、お祝いで両親が連れていってくれたのが、
「ホテル・ポリーニヤ」。

故郷・清里町の人でこのホテルに行った事のある人は本当に珍しいと思う。
それほどに、このホテルは田舎にあって他所者の感があり、ういた存在だった。
だれも高いお金をだしてこのホテルに行こうとする者はいなかったろう。
第一あんまり近くなので有り難さに欠けるし、田舎は変化を嫌うし。
しかし僕の家族も、親戚だらけの清里町では、他所者一家だった。
だから両親にこういうホテルに行ってみようなんていう気持ちが起きたんじゃないか。
清里の人ならまず行かない。これは肌で感じてきたこと、説明できないけど、確信する。

ホテル・ポリーニヤ。
不思議な響きの名前、まったく暗記できなかった。
その響きだけで、まったく新しかった。中学生の僕の誕生日は、
慣れ親しんだ甘ったるいバースディケーキにローソクの灯とクラッカーから遠く離れ、
このデザイナーズホテルのなかの高級イタリア料理店で、
ピザを、家族全員生まれて初めてのピザを、
食べる、ということに、好奇心が向いたのだ。なんてハイカラなミ・ファミリア。

このホテル、入り口をくぐると、円形に水がはってあるエントランスを通過する。
光は薄暗く、神秘的な、異質な静謐さを湛えていた。と今なら書くこともできる。
しかし当時のぼくは、その空間に対応する言葉を持たなかった。
どこから湧くのかとにかく不思議な水。奇妙神妙。緊張。高級。しづか。
このエントランスはすごく印象に残っていて、
SF宇宙空間にでもいるような奇妙な浮遊感とともに思い出す。
ゆるやかな曲線の壁にそってテーブルが整然と置かれてあり、
その一つに座り、僕ら一家はピザをオーダーした。
居心地は、もちろん、落ち着かない。
父親は必要以上に戯けたことを言ってちゃかそうとするし、
母親は照れ隠しかそれをいつも以上に大声で笑っていた。
僕は僕で、いかにもそれっぽく、そこに居た。つまり落ち着いているように見せていた。
弟は?どうしてただろう。きっと僕より冷静だったと思う。当時あどけない小学五年生。

そんなのだから、ピザの味は覚えていない。ただひんやりした空間で、
青い色調の照明が仄暗い、冷たいような空間で、ピザを食べたのだと思う。
とても不思議な、かつてない不思議浮遊空間での食事。
これが僕のピザ事始めであり、現代建築の原体験であった。
そこで僕は十四歳になった。
あの照明は食事は目でも味わうものだという点で失敗だと、今ニ十八歳の僕は思う。
ホテルはその後、いつしか営業をやめていた。
建物だけが田舎の片隅でぽつんと不思議な存在感で、しかしようやく風景に馴染んで。


なぜこんなことを急に書く気になったかというと、この他所者ホテルが、
じつは伊東豊雄の設計によるホテルであったことを、
昨日、新聞記事で初めて知ったから。珍しく記憶がフラッシュバックしました。
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060512&j=0024&k=200605116943
札幌も田舎だけど、もっと田舎の知床で、伊東豊雄だなんてびっくり。

いつの日か、お世話になっている先生たちや友人のみなさんを、
このホテルに御招待できたら、きっとすごく嬉しいです。
自分の不思議体験も新らたな展開を生んで、とんでもなくなるかもしれないし。
不思議は不思議のまま、でいいのだけど。
| - | 03:01 | comments(3) | trackbacks(0) |
コメント
コメントありがとうございます。

ともかずさん、ホテルは駅からわりと近いよ。
ただし田舎者の遠近感でいうところの「近い」でありますこと、お気をつけあそばせ。
それだけ普段から広い大地に暮らしているのですよね。ぼくはふる里、大好きです(記憶のなかでだけ)。
斜里から清里に行く道の、清里に入る手前ぐらいの左側。わかる?
こんど一緒に旅すっか?!
頑張れポンコツ車〜、ほっぺたに風うけて長い道を、ドキドキする方へ
(byプリンセスプリンセス♪「パイロットになりたくて」)

vatoさん、ありがとうございます。
いろいろ行かれているようですね。
http://128.121.67.125/archives/homeless98/log002.html
↑ここでも知床報告を拝見いたしました。
美幌は山口昌男先生の故郷ですね。斜里岳に登っていらっしゃるとは、ディープですね〜。ぼくは地元なので覚えてるだけで少なくとも五回は登ってます(標高1545M)。ちょっと自慢(?)です。沢登りのいいコース、登っていると次々展開があって、ぼくは一番好きな山です。この山を見て育ちました。ほかに目立つものもありませんでしたしね。ちょっと思い出しちゃいました。。
バトさん、湘南はいまどんな季節ですか?一回しか行ったことありませんが、すごく好きです!もう一回行きた〜い。
| 亀キチ | 2006/05/15 1:59 AM |
じつは僕は、中1のときに、ある仲間たちと一緒に美幌町に泊まったことがあります。屈斜路湖で「クッシー!」と叫び、斜里岳にも登りました。だから、北海道というと、僕はあの辺の風景を真っ先に思い出します。原風景というと大げさだけど。いつか吉成君に案内してほしいですね。あれから、30年だよ・・。
| vato | 2006/05/14 12:19 PM |
ステキだな!
どこに建ってたかあまり記憶にない。
3年くらい前に仕事で毎月1回は知床斜里駅周辺まで行ってたのだが。
ノスタルジック!
| ともかず | 2006/05/14 5:14 AM |
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