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北川陽稔写真作品を観て@北海道近代美術館「もうひとつの眺め」展
0)以下の文章はあくまで個人的な感想でありますことを御承知おきください。私はこの展示を2015年2月3日に見ました。

1)回想。
Kの作品をはじめて見たのは、ICCがまだ豊平1条にあったころ。

写真が電算処理されてプロジェクションされていて、光景が計算のなかで揺らいでいた。
廃墟のような光景。
光景。
像が有り得ないような電算計算のノイズの海を泳ぎ、周期的に、瞬間の像を結び、またノイズへと霧散する。

ほとんどが、ノイズのうごめき。
一瞬だけそれが光景になってくれるのがうれしくて、
光景がまたノイズの海に還元されていくのが不思議で、
ずっとみていた。

2)連想。
遠く、思い出される記憶の光景は、直島でみたジェームズ・タレルの浮かび上がる光だ。
真っ暗の家のなかに入り、椅子に腰掛けて正面の闇をしばらく見つめる。
しばらくすると闇のなかにぼわっと光がたち顕れる。
光は、暗闇に目が慣れることで浮かびあがる、かすかなかすかな弱い光だった。
自分の内側に光が生まれたような感動を覚えたものだった。

3)連想2。
お寺の真っ暗の地下空間を壁伝いに進んでいくと、とつぜん光る梵字に出会う、という経験をしたことがある。
京都の清水寺、随求堂の「胎内めぐり」だ。
お堂の地下空間が菩薩の胎内に見立てられているのだ。
暗闇のなかを手探りで歩き、光の梵字に出会い、また暗闇を歩き、外界にでる。
いのちの誕生の原初の光を、死と再生を、体験できる。
暗闇の迷路のなかで、発光する石に行き当たるのは、まさに奇蹟のようだった。

4)連想3。
奄美の沖永良部島の洞窟で、演劇が上演されたことがある。
文化人類学者の今福龍太が主催する「奄美自由大学」の体験型プログラムだ。
白衣をまとうニンファたちが、昇竜洞の暗闇のなかで、オルフェとユリディスの運命を見守る。
暗い洞窟のなかの白衣の発光。
人、というより白い衣が、闇のなかに気配を与えていた。
これもまた、闇と光を行き来する、胎内めぐりの体験なのだった。

5)Kの作品(近代から現在へ)
北海道近代美術館でみたKの写真の発光は、なんだったんだろう。
反射こそすれ、写真が光を発するはずはないのだが、しかしKの写真はたしかに光っていた。
暗い美術館内に、発光していた。

建築内部の光景だ。
建築空間のなかでも、階段や曲がり角など、二つの通路の結節点が写されている。
空間は折り畳まれている。
タイルのミニマリズム、階段を昇降するときの段、段、段、段の連なり、
化粧石の大きな壁が、独特の質感でプリントされていて、
薄明かりのなかで、ほのかに浮かび上がり、妙に生々しい。
夢のなかで、どこをどうしても抜け出すことができなくなった過去の記憶の空間、といったイメージが虚ろに浮かび上がる。
その階段の踊り場を曲がっても、また階段が続いている。
その曲がり角を曲がっても、別の角からまた同じ場所に出てくる。
悪夢だ。
しかし、なんだろう、この静けさは。
写真だから、音がしないのは当然なのだが、
脳髄に響き渡る神経のハウリングの静寂が、写真の空間に吸い込まれてゆく。
初めて見る視覚体験だった。

6)Kのノートより。
「1972年、私の未知なる時代の分水嶺」というKのノートには、
ヴァルター・ベンヤミンの夢の記述が引用されている。
べンヤミンは、こういって良ければ、カタストロフの思想家だ。
破壊的性格のなかに、ノスタルジーのオーラも、歴史も、未来さえも、見つめる。
Kは、ベンヤミンを引きながら、
「懐かしい」という感情がどこから来るのかを探ってゆく。
「初めて見る特定の光景が、以前から自分が既に見知っているものであると錯覚することがある。それは未知なる記憶であり、未知なる時代への無意識の思慕である。」(同上)

6-1)脱線。
「なつかしい」とは、奄美では、「愛しい」といった意味もあるそうだ。
沖縄でいうところの「かなしい」か。「かなさんどー」というと「愛してる」。
「なつかしい」という言葉に「愛」がこもるのは、ブラジルのサウダージもか。

6-2)脱線した話をKに戻す。
Kは原初の「懐かしさ」を探りながら、自分が幼年期を過ごした札幌を、見つめ直す。
そこで見る札幌の光景は、歴史が書き込まれた「札幌」だ。
そこで見る建築は、近代から現在へと脱皮してきた、時代の肌としての「建築」だ。

時代をまとった「建築」の胎内で、Kはカメラを向ける。
カメラ内部の暗い部屋に、光を招き入れている。
ミニマルな建築の襞が、かすかに、夢のように光っている。
「いま」という光にすべての時代の気配を写して。
Kは「札幌」の1970年代、80年代、90年代という上昇と飽和の時代
そして0年代、10年代という喪失の時代の札幌を問うている。
ここでは札幌オリンピックのあった1972年という年号が時代を画す特別の意味を持っている。

7)結論
Kの写真の光は、不思議な光だ。
視覚体験としても稀有なものだ。
おそらくこの光は、図録などでは再現されえないだろうから、
実物を見たほうが絶対にいい。
物としてのすごさがある。
Kの写真は、現実の物体とデジタルの融合によって、さらに時間にむけた思索によって、
高度に制御された物質だ。
その光は、現代的な光だ。
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