札幌の古本屋の窓辺から 〜古書出張買取りの書肆吉成

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××××××伏字
探している本が見つからない! その本はいつも良く参照するものだからかえって最後に置いた場所が思い出させない! どこいった?! ――あった! ありました! なんと本棚の上、なんという無意識!

××××××

活版印刷がなくなって困るのはきっと、
耳付き和紙に美しく印字しようとするとき、だと思う。
もちろん今の時代は豪華限定本なんて流行らないカモシレナイ。
でも、たとえば古本屋・伊藤書房が今月発行した目録を見ていると
豆本や限定版の書物はやはりすごいな、と思う。
工芸品としての書物があってもいいと思う。
あるいは昨日コーヒーを飲んだ古本とビールの店「アダノンキ」さんが蒐集している趣味の本も好き。
札幌で発行されている「旅粒」という冊子に参加させてもらったとき、
木の枝に活字で印字する、ということをやってみました。
木の枝なんて、プリンターにはぜったい入りませんものね。

××××××

いっぽうで、捨てがたい世界が、簡単印刷簡易製本の世界。
聞く処によると、いま東京では「ジン(zine)」と呼ばれる
簡単印刷簡易製本の冊子がアジビラのように出回っているという。
模索舎、Radical Left Laughter(RLL)、気流舎、タコシェなどの各店で入手可能とか。
いったいどんな冊子なのだろう。。

××××××

吉増剛造展「詩の黄金の庭」のケースで、金石稔氏らの「騒々」を初めて見ることができました。ゲストの席に吉増剛造と書かれた目次ページのみですが。
この「騒々」がまた、ガリ刷り簡易製本、だったと思います。
ガリ版なんて、活版印刷以上に今や失われつつある技術ではないでしょうか。
BEKAのみなさんが奄美自由大学に持ってきて配った冊子がガリ刷りで、
ガリを切るのは楽しい作業だったそうです。
いまやろうと思ったら、プリントゴッコとかですかねー。
木版印刷って、いまどこかで出来るところはあるのでしょうか。

××××××

きょう何気なく四方田犬彦『日本のマラーノ文学』を立ち読みしていたら、
帷子耀(かたびら・あき)のことが書いてあってビックリしました。
17ページにわたって、帷子耀の驚きのデビューから詩との別れ、
さらに現在なにをしているのか(!)までが描かれています。
波のうごきにも似て、ひとときたりとも姿を固定しない詩作の変転が紹介されて、
その少年の詩の、欠如感と悪童ぶりにスピード感を感じました。
四方田氏が少女マンガ家を論じるときの刹那の疾走感を思い出したりもしました。
ロートレアモンを思い浮かべるのは私だけでしょうか?
帷子耀の詩集と呼べるものは『スタジアムのために』一冊のみとのこと。
これは瀧口修造がはじめた書肆山田「草子」というシリーズの、なんと二冊目に別冊として刊行されています(昭和48年8月29日)。二冊目がいきなり別冊、というのも驚かされますが、不思議なことに書肆山田のホームページのクロニクルにはこの詩集のことが載っていません。なお草子には限定版が、耳付きの「蔵王紙雪晒し」などの和紙で、アンカットで作られたりもしていますが(草子2と3の限定版は手に触れたことがあります)、それらもホームページのクロニクルに載ってはいないようです。
また帷子のこの「草子別」は、他の「草子」と違っていて、B5版約70ページの並製本、表紙カバーはなく、帯があり、ビニールカバーがついています。
(この辺ちょっとマニアックですみません)

××××××

さて、吉増展で見た「騒々」。
四方田犬彦『日本のマラーノ文学』の「帷子耀」には、この「騒々」についても触れられていました。
なぜなら帷子は、金石稔が主催する詩誌「騒々」の同人だったからです。
四方田氏の記述によれば、同時期に「現代詩手帖」の投稿欄に参加していた人たちが金石稔主催の『騒々』に参加し、「時代の最前衛の同人誌として評判を呼び、一時は部数が千部を超えるまでになった。」とのこと。
そして「『黄金詩篇』を纏めたばかりの吉増剛造が、彼らにエールを送った。帷子は吉増論を書き、……」(p172)

××××××

1970年という時代が立ち上がってきて、現在に呼びかけてくるのを感じ始めます。1970年3月には、吉増剛造『黄金詩篇』が出版されます。
もちろんこの1970年を用意したのは1968年に13歳で投稿作品が掲載され、のちに寺山修司が現代詩手帖賞に推した帷子耀がいて、
1967年に「熟慮の敗走」(黄土社)を上梓した、斜里郡清里町上斜里から小金井に移り住んでいた詩人・金石稔がいて、
1968年頃でしょうか、その金石氏が吉増剛造先生と親交を結び、……敗走や航海や出土があって、……。

××××××

波に
眼をすりよせて
みるのは

波へ
眼をずらしよせて
みるのが

涙には
雲が映える
雲は
涙をふくむ
(帷子耀「スタジアムのために」p.55-56)

××××××

1973年18才になった帷子耀。一冊の詩集として彼が詩を発表することは、これが最初であるが、おそらく今後、決して再びあり得ないことと思う。

でもどうだろう、この醒めた抒情は。

××××××

少しの疑問。
四方田氏は現在の帷子耀に会いに行く。若き日の四方田氏の目の前を疾走して消滅してしまった人物に抱いた疑問を、どうしてと、明らかにしたかったから。どうして詩を書くことをやめてしまったのかと単刀直入に質問した。その答えはしかし、衒学趣味を読み取っていた(p173)四方田氏にとって納得のいくものだったのだろうか。この返答は本音なのでしょうか。
「もう自分に才能がないとわかってきたからですよ。書くことが無性に楽しいうちは、それでよかった。けれどもあそこまで書いたあとは、それからは勉強しないと書き続けることができないじゃありませんか。ぼくは勉強というのが昔から嫌いだったし、勉強してまで詩を書きたいと思わなかったのですよ」。(p183)

わたしは、「スタジアムのために」の最終部分を読み返す。
とても潔い、すっきりした清々しさを感じる。

××××××

なんでもない
なに者のものでもない
血液を
あたえること

凍てつくことで
そびえる
きみ
そびえつづけるがいい
なるべくなら
空にある悲惨をはるかなものにする
たかさで

わるびれず
ちびた
鉛筆をなめ
鉛筆をなめ

雪しるべに雪しらずを

××××××

この悲惨の「たかさ」。
わるびれずに潔く、最後に詩との別れを書く。そしてきみのたかくそびえることを希む。
この醒めた抒情の決然たる「たかさ」。
詩集のタイトルになっている「スタジアム」とは、この「たかさ」のことなのでしょうか。
詩のたたかい、から、詩的なたたかいへと舞台がうつってゆくのでしょうか。

この詩集が、到底「才能がない」とか「勉強が嫌い」という人のものとは思えません。
そう「してまで詩を書きたいと思わなかった」が、本音では?
もっとたたかわなければならないスタジアムが発生したのでは?
それが、血液をあたえた「きみ」の聳え立ち、なのでは?
詩との別れという悲惨をはるかなものにするほどに、高くそびえる「きみ」……。
もっともこれはわたくしの、下衆のかんぐり、邪推というものにすぎませんが。

××××××

どうして私はこんな事を書いているのでしょう。
処女詩集で詩をやめてしまった帷子耀と、
処女詩集でもって詩集として自分の詩を発表することは決して再びあり得ないことと思う、とあとがきに書いたのちも幾度も出土し誕生し、詩集を出してきた金石稔とが、
おなじ『騒々』という同人誌にいた、ということ。
その同人誌を吉増剛造展で見ていて、簡単印刷簡易製本でとてもチャーミングな佇まいだったこと。
そのことが気になっているのでしょうか。

いいえそれとも、昨晩、近所のコーチャンフォーという書店の詩集のコーナーに、稀らしくじっと静かに食い入るように本をながめる人がいたので、あぁいい時間を過ごしているんだなぁと遠慮して、文芸批評のコーナーに行ってみると四方田犬彦著『ドゥルシネーア赤・日本のマラーノ文学』があって、開いてみると面白くって……、きっとその延長でいままで来ている、としか他に考えようがありませんね。読書なんてそんなもんです。本が本を呼んじゃってとめどないですね。ドゥルシネーアというのは双子本で、その双子のもう一方は『ドゥルシネーア白・翻訳と雑神』、四方田犬彦氏による吉増剛造論と言ってよい書物なのですから。。(こちらは「(吉増詩は)変化にたいしては受動的だ」なんてさりげなく書いてあって、すごい書物でした。)

××××××

アフンルパル通信ex01「露口啓二」/ネットでの注文を承っております。
| - | 07:57 | comments(1) | trackbacks(0) |
コメント
「帷子耀 唯一の詩集 スタジアムのために 肉筆原稿 最初で最後!
というタイトルでヤフーオークションに原稿が丸ごと本日終了で出品されていますね。正に最初で最後のチャンスなんでしょうね。
| kk | 2008/11/24 9:05 AM |
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