札幌の古本屋の窓辺から 〜古書出張買取りの書肆吉成

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札幌古書組合 広報記事1
今期の札幌古書籍商組合事業部で広報を担当することになって、今月で二ヶ月目です。

広報の仕事は、北海道内の古書組合加盟店(64店舗)に月に一度のセリ市の案内を発送する仕事です。案内の下部分三分の一に、前回のセリの落札値を抄録します。この落札表が本の相場を知る重要な資料です。いまどんなジャンルの本が高値で売買されているかを感じ取ることもできます。そのセリの案内の裏面に読み物を連載することになりました。
セリ場は古書組合加盟者しか参加することのできない、限られた業者の世界です。一般の人は入場することができません(ときおり見学の人もいますが)。
私はセリの当日は会場作りの手伝いと開札と落札結果の発声も担当しています。

さて、一月遅れで、セリの案内の裏面に連載している記事をブログに再録する企画第一弾です。
第一回目は、札幌古書組合を創設し、最初の組合長になりながら、積極的に文化的価値の高い書籍の出版を手がけるも、商売としてはうまく行かずに悔やまれながらも店をたたむこととなった多才な古書店・尚古堂書店さんについてです。

あんまりマニアックすぎるかも知れませんので、本当に古本屋と古本が好きだという方にご高覧いただければと思います。

――――――――――――――――――

■こんにちは。今期の広報を担当することになりました、書肆吉成の吉成秀夫です。いたらぬところもあるかと思いますが、その際はどうかご寛恕下さいませ。今後ともご指導ご鞭撻をお願いいたします。
■さて、このたびは新事業部長の南陽堂書店さんにせっかくだから案内の裏に少し読み物を書いたらどうかと言われました。ですが私のような新参者に諸先輩方の興味に供するものが書けようはずもなく、ほとほと困りました。
■考えた末、せっかくの機会ですので、いままで本棚に眠っていた『北のアンティクアリアン―札幌古書店の足跡―』昭63(以下『北A』)と『古本えぞの細道』平16(以下『古E』)をひっぱりだし、この場を借りて商売の先人に学んでみたく思いました。
■右も左もわからぬ若造の、行き当たりばったりの勉強ですから、何でもない事に感心したり、読み違えや勘違いもあるかもしれません。わたくしなりにではありますが昭和5年に結成(『北A』p.100)されて以来、77年の歴史ある札幌古書籍商組合の来し方を学びたいと思いますので、お気づきの点や誤り、補足や知られざるエピソードなどございましたらご教示いただければ幸いと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
■今年は全国規模のセリも札幌でありますので、札幌のことのみならず、全国的なお話も伺えるいい機会となるかもしれません。とても楽しみです。
●このたび様々なことを初めて知って驚きました。その中でもまずは初代組合長でした尚古堂書店さんというお店の事に興味がひかれました。商工会議所の名簿によると明治25年創立とのこと(『北A』p.21および「ふぐるまブレティン」56号参照)。二代目代田茂氏は昭和5年、札幌古書籍商組合を結成、初代組合長に自ら就任(以下『北A』p.100、高木庄治氏「二代・代田茂さんのこと」を参照)。組合結成後、当時札幌より人口も多く業界の盛んであった小樽勢と合流し、合同セリ市が交互に開かれたそうです。昭和6年1月には「蝦夷往来」を創刊(これに先んじて大正10年7月に文芸誌「路傍人」を創刊。「蝦夷往来」は第14号.昭10まで)。これにより信用と名声をかち得たらしいです。本業の古書の方は、目録を「蝦夷往来」に挿入して配布したとここでは推察されています。終戦の翌昭和21年、北海道の出版ブームが沸き起こると(先月発売していた季刊「札幌人」の特集も参照すべきでしょうが、先号未購入)、「北日本社」「北方書院」の2社名を駆使して矢継ぎ早に出版物を刊行しています。昭和24年秋「北海道文化奨励賞」受賞。皮肉にもこのころから商売が時流に乗らずに傾きはじめ、昭和26年3月、店じまいの半額セール。当時の新聞には「もとよりこのような良心的出版が採算のとれるはずはなく負債は重むばかりなので」とあります。半額セールで売れ残った本を棚にそのまま残しベニヤ板でカベを張り、食堂に早変わり。しかし食堂も結局はうまくいかないままとなりました。ここでドキッとしたのが、「本棚と残本を、そのままにして改装したことを思う時、何時かは再起しようと考えていたのではなかろうか」と、ご執筆の高木庄治氏が筆を添えていることでした。文脈は違いますが、べつのところではこうもご発言していました。「まあ、この商売をやっていれば、結局は本が嫌いでやっている人はまずないですからね。これだけは共通して言えることですね」(『北A』p.32)。    <続く>


―――――――――――――――
余録一滴。
昨日の日記に書いた、伊藤整のゆかりで訪ねた小樽市の水天宮。
ここはかつて、古書組合が札樽連合古書市会で、なんと常設のセリ場として使っていたのだそうです。
昭和十年ころの話です。水天宮に古書並び、活気あふれる振り市。瞼の裏に浮かべてみるのも楽しいことです。

ちなみに「振り市」とは別名「口ゼリ」ともいい、現在通常おこなわれている「置き入札」(本に封筒が付いていて、落札希望価格を紙に書いていれていく)ではなく、一つ一つ口で説明しながら希望価格を発声して値を吊り上げて行くオークション方式のことです。
| 札幌古書組合 広報記事 | 20:31 | comments(4) | trackbacks(0) |
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