2009.06.29 Monday
8号、ツメの段階
アフンルパル通信八号を刊行するにあたって、
最後のツメに入ってきている。
今回もまた、玉稿を賜る。執筆者の方々の想いの深さを感じつつ、
こういう原稿を冊子にできる喜びにひたすら感謝する。
朝吹真理子さんから、お葉書を頂戴した。
アフンルパル通信柒号がポストに入っていた時の喜びを伝えて下さる。
とても励みになるし、朝吹さんご自身の言葉への真剣さが
突き刺さるように胸に刻まれる。八号もがんばろう。
コーチャンフォーという新刊書店に、久しぶりに立ち読みに行く。
尾崎翠のムックが出ていた。津原泰水氏の文章を読む。
津原氏については、じつは「津原やすみ」の頃から愛読。
中学生の頃、同級生の女の子に薦められて読んだ、講談社X文庫。
以来「わたしのエイリアン」シリーズは全部読んだ。
すべて大事に透明なビニールカバーをかけて。
ニュージーランドにホームステイに行ったときも、鞄の中に。
大竹昭子氏の写真の見方のような本を立ち読みした。
「その瞬間の愛し方」を学ぶのが、写真の一つの見方と思った。
石川直樹さんの写真が二枚、小島一郎が一枚、プンクトゥム・フォトグラフィック・トウキョウのDMで眼に親しんだ写真もある。
写真と出会った瞬間に、
大竹さんの頭と感触をめぐった、そのままの言葉がいかにも的確で。
そのあとに、セバスチャン・サルガードの『人間の大地』を棚から取り出す。
大きな箱から大きな本を取り出す。
大きな扉を開くと、まず、言葉があった。
痛切な言葉。冷徹? いや、まっすぐな、これは希求の言葉だ。
現実を見よ、そしてその目に、そこに写された世界と同じ光を宿せ。
そして、希求するのだ、夢以外の、未開拓の、生きる場所を。
『人間の大地』の翻訳は、今福龍太先生。
わたしが最もお世話になった先生の一人。
心の中では、いますぐにでもまた私淑したいと思っている先生。
でも、今日、本を読んで、最も傾倒していた頃と同じ昂ぶり、
同じひらめき、熱、濃さが甦り、それを感じれて幸せと思った。
しばらく少し離れて、直接教えを請う事のない時が流れ、
かえって一層の切実さをもって、先生の言葉を読める。
まだ、これほどの集中力が自分の中に眠っている。
それを呼び出すのは、今度は別天地だ。
雑誌「すばる」浅野卓夫氏の文章がじつにいい。
師との交流が、じつにしっかりした筆致で書かれている。
歩み方が着実で、ブレない。サウダージ・ブックスの精神が
一本、ぴんと貫かれている。
きっと評判いいんだろうなぁ。すごくいい文章だもんなぁ。
巻末の執筆者紹介で「翻訳家」となっていた。う〜ん。
「聞き書き」もある意味「翻訳」カモシレナイ。
フォトグラファーズ・ギャラリーが
物凄い本を発行したのに、その本があまりにも圧巻過ぎて
なにも言えずにいた。
とにかく凄い本です。田本研造についての本です。
そのなかで谷口雅春氏が寄稿しているのを読みますと、
武林無想庵やイヴォンヌや、その近辺を描きつつ、露口啓二氏の写真に至りつく
優れた「北海道論」に、「植民地文化論」になっています。
この根無し草感。北海道へのステレオタイプイメージとの齟齬、皮肉な感情。
わが意を得たり、と膝をうって喜びました。そうそう、これこれ。
http://www.pg-web.net/scb/shop/shop.cgi?No=249
↑こちらで買えます。とにかく圧巻です。奇跡です。
アフンルパル通信の創刊号に文章をくれてもいた、
アイヌの友だちと、久方ぶりにお酒を飲んだ。
サシで飲むのは初めてかも。
彼は札幌が大キライ。人と人との距離が遠すぎるという。
そしてまた、こんなことも言っていた。
清掃工場って、なんであんなに見た目がキレイなんでしょうかね。
札幌も、見た目キレイですよね。なんか似てるんですよね。清潔感。
汚いものは、この北の地には似合わない。
イメージもキレイ、空気もキレイ、光もキレイ、言葉もキレイ。
ここは世界を浄化する土地。だからキレイじゃなきゃ。
汚いものは、なかったことにしよう。覆い隠そう、灰色のビルで。
カーボンオフセットという、地球温暖化対策のひとつで、
二酸化炭素を吸収する分を金で買う、というシステムがある。
CO2排出量の多い工場が、森や林に、自分の出しすぎた二酸化炭素を買ってもらって酸素にする、
というもの。
べつにそんな工場の為に、最初から森林があったわけじゃないのにね。
このカーボンオフセットの地として、北海道に熱いまなざしが集っている。
ギラギラした資本主義の眼差しだ。
森や林は、間引きされ、間伐されてゆく。
木々の緑が十分に光合成できるように、そうして陽射しがゆきわたる、キレイに割り切れる整除された林になる。
暗い木陰や、のばらのやぶや腐食の湿地は、姿を消すだろう。
それこそが、地球の環境に良いのだ、と資本主義は言うだろう。
キレイな北海道。
そうさ、もともと原生林なんかほとんどありはしないんだ。
自然は人間も含めた環境の中で、あたらしい「自然」となって生きていく。
自然破壊、なんてものはない。破壊じゃない。自分でやってんだ。自然はそんなにヤワじゃない。人間よりすごい。
そういう環境を作ってるんだ。砂漠を作ってるんだ。島を海に沈めてんだ。
ダムを造ってんだ、埋立地を造ってんだ。保水力の無い森、洪水する川。
人工的な生存環境を作ってんだ。キレイだ。それはとても衛生的だ。
坂本龍一さんが呼びかけていることは、とても貴重だと思う。
いまの世界に最も必要なことに声を上げているし、実践もしている。
本当に大事なことを知っているし、危機感も人一倍持っていると思う。
でも、でも。 カーボンオフセットの森。キレイな森。
本当にもう、そうでもしなきゃならない処まで、来てるんでしょうね。
きっとそうなのでしょう。
地方にとっても貴重な資源(財源)になるようです。
坂本龍一さんは北海道の森にわざわざ足を運んで、カーボンオフセットの森を実際に見て歩かれた……、新聞記事で読みました。
ル・クレジオのことを「かっこいい奴」と評しているのには思わず笑ってしまいました。
環境問題は、いまさら「自然とは何か」を問ういとまも無く、火急の処置を迫っている。
でも、でも。耳の奥に小声で低く問う声が聞こえる。「自然って、なんだろう」
さぁ、アフンルパル通信八号、いよいよ大詰めです。
今号に執筆してくれた方々は五十音で、
石川直樹
宇波彰
くぼたのぞみ
管啓次郎
関口涼子
文月悠光
題字・吉増剛造
(敬称略)
です!!!!
7月10日発行予定です。
どうぞお楽しみに!
最後のツメに入ってきている。
今回もまた、玉稿を賜る。執筆者の方々の想いの深さを感じつつ、
こういう原稿を冊子にできる喜びにひたすら感謝する。
朝吹真理子さんから、お葉書を頂戴した。
アフンルパル通信柒号がポストに入っていた時の喜びを伝えて下さる。
とても励みになるし、朝吹さんご自身の言葉への真剣さが
突き刺さるように胸に刻まれる。八号もがんばろう。
コーチャンフォーという新刊書店に、久しぶりに立ち読みに行く。
尾崎翠のムックが出ていた。津原泰水氏の文章を読む。
津原氏については、じつは「津原やすみ」の頃から愛読。
中学生の頃、同級生の女の子に薦められて読んだ、講談社X文庫。
以来「わたしのエイリアン」シリーズは全部読んだ。
すべて大事に透明なビニールカバーをかけて。
ニュージーランドにホームステイに行ったときも、鞄の中に。
大竹昭子氏の写真の見方のような本を立ち読みした。
「その瞬間の愛し方」を学ぶのが、写真の一つの見方と思った。
石川直樹さんの写真が二枚、小島一郎が一枚、プンクトゥム・フォトグラフィック・トウキョウのDMで眼に親しんだ写真もある。
写真と出会った瞬間に、
大竹さんの頭と感触をめぐった、そのままの言葉がいかにも的確で。
そのあとに、セバスチャン・サルガードの『人間の大地』を棚から取り出す。
大きな箱から大きな本を取り出す。
大きな扉を開くと、まず、言葉があった。
痛切な言葉。冷徹? いや、まっすぐな、これは希求の言葉だ。
現実を見よ、そしてその目に、そこに写された世界と同じ光を宿せ。
そして、希求するのだ、夢以外の、未開拓の、生きる場所を。
『人間の大地』の翻訳は、今福龍太先生。
わたしが最もお世話になった先生の一人。
心の中では、いますぐにでもまた私淑したいと思っている先生。
でも、今日、本を読んで、最も傾倒していた頃と同じ昂ぶり、
同じひらめき、熱、濃さが甦り、それを感じれて幸せと思った。
しばらく少し離れて、直接教えを請う事のない時が流れ、
かえって一層の切実さをもって、先生の言葉を読める。
まだ、これほどの集中力が自分の中に眠っている。
それを呼び出すのは、今度は別天地だ。
雑誌「すばる」浅野卓夫氏の文章がじつにいい。
師との交流が、じつにしっかりした筆致で書かれている。
歩み方が着実で、ブレない。サウダージ・ブックスの精神が
一本、ぴんと貫かれている。
きっと評判いいんだろうなぁ。すごくいい文章だもんなぁ。
巻末の執筆者紹介で「翻訳家」となっていた。う〜ん。
「聞き書き」もある意味「翻訳」カモシレナイ。
フォトグラファーズ・ギャラリーが
物凄い本を発行したのに、その本があまりにも圧巻過ぎて
なにも言えずにいた。
とにかく凄い本です。田本研造についての本です。
そのなかで谷口雅春氏が寄稿しているのを読みますと、
武林無想庵やイヴォンヌや、その近辺を描きつつ、露口啓二氏の写真に至りつく
優れた「北海道論」に、「植民地文化論」になっています。
この根無し草感。北海道へのステレオタイプイメージとの齟齬、皮肉な感情。
わが意を得たり、と膝をうって喜びました。そうそう、これこれ。
http://www.pg-web.net/scb/shop/shop.cgi?No=249
↑こちらで買えます。とにかく圧巻です。奇跡です。
アフンルパル通信の創刊号に文章をくれてもいた、
アイヌの友だちと、久方ぶりにお酒を飲んだ。
サシで飲むのは初めてかも。
彼は札幌が大キライ。人と人との距離が遠すぎるという。
そしてまた、こんなことも言っていた。
清掃工場って、なんであんなに見た目がキレイなんでしょうかね。
札幌も、見た目キレイですよね。なんか似てるんですよね。清潔感。
汚いものは、この北の地には似合わない。
イメージもキレイ、空気もキレイ、光もキレイ、言葉もキレイ。
ここは世界を浄化する土地。だからキレイじゃなきゃ。
汚いものは、なかったことにしよう。覆い隠そう、灰色のビルで。
カーボンオフセットという、地球温暖化対策のひとつで、
二酸化炭素を吸収する分を金で買う、というシステムがある。
CO2排出量の多い工場が、森や林に、自分の出しすぎた二酸化炭素を買ってもらって酸素にする、
というもの。
べつにそんな工場の為に、最初から森林があったわけじゃないのにね。
このカーボンオフセットの地として、北海道に熱いまなざしが集っている。
ギラギラした資本主義の眼差しだ。
森や林は、間引きされ、間伐されてゆく。
木々の緑が十分に光合成できるように、そうして陽射しがゆきわたる、キレイに割り切れる整除された林になる。
暗い木陰や、のばらのやぶや腐食の湿地は、姿を消すだろう。
それこそが、地球の環境に良いのだ、と資本主義は言うだろう。
キレイな北海道。
そうさ、もともと原生林なんかほとんどありはしないんだ。
自然は人間も含めた環境の中で、あたらしい「自然」となって生きていく。
自然破壊、なんてものはない。破壊じゃない。自分でやってんだ。自然はそんなにヤワじゃない。人間よりすごい。
そういう環境を作ってるんだ。砂漠を作ってるんだ。島を海に沈めてんだ。
ダムを造ってんだ、埋立地を造ってんだ。保水力の無い森、洪水する川。
人工的な生存環境を作ってんだ。キレイだ。それはとても衛生的だ。
坂本龍一さんが呼びかけていることは、とても貴重だと思う。
いまの世界に最も必要なことに声を上げているし、実践もしている。
本当に大事なことを知っているし、危機感も人一倍持っていると思う。
でも、でも。 カーボンオフセットの森。キレイな森。
本当にもう、そうでもしなきゃならない処まで、来てるんでしょうね。
きっとそうなのでしょう。
地方にとっても貴重な資源(財源)になるようです。
坂本龍一さんは北海道の森にわざわざ足を運んで、カーボンオフセットの森を実際に見て歩かれた……、新聞記事で読みました。
ル・クレジオのことを「かっこいい奴」と評しているのには思わず笑ってしまいました。
環境問題は、いまさら「自然とは何か」を問ういとまも無く、火急の処置を迫っている。
でも、でも。耳の奥に小声で低く問う声が聞こえる。「自然って、なんだろう」
さぁ、アフンルパル通信八号、いよいよ大詰めです。
今号に執筆してくれた方々は五十音で、
石川直樹
宇波彰
くぼたのぞみ
管啓次郎
関口涼子
文月悠光
題字・吉増剛造
(敬称略)
です!!!!
7月10日発行予定です。
どうぞお楽しみに!

















